大会長挨拶
日本臨床倫理学会 第11回年次大会 大会長
竹下 啓
(東海大学医学部基盤診療学系医療倫理学領域 教授)
日本臨床倫理学会第11回年次大会を、2024年3月16日(土)と17日(日)を会期として順天堂大学本郷・お茶の水キャンパスにおいて開催させていただくことになりました。次の10年のスタートとなる大切な年次大会の大会長を務めることを大変光栄に存じますとともに、日々その責任の重さを実感しながら準備を進めております。
年次大会のテーマは「医療・ケアの基盤としての臨床倫理」といたしました。昨年度、日本臨床倫理学会広報・ホームページ委員会委員長として学会ウェブサイトのリニューアルを担当し、学会設立時からのさまざまな記録を読み込みました。そのさいに「臨床における倫理は、医療の本質的な一要素だ」という新田國夫理事長の言葉にあらためて共感し、着想を得たものです。
2012年に日本臨床倫理学会が設立された当時は、臨床倫理コンサルテーションを中心とする臨床倫理支援の体制をこれから構築しようとする段階の病院がほとんどだったのではないかと思います。組織図や規程の上では臨床倫理支援を担当する部署があったとしても、実際の運用は十分に始まっていない病院もあったかもしれません。しかし、学会設立から10年以上経過した今日、上級委員会の研修や年次大会で各病院の活動を拝聴しますと、多くの病院において臨床倫理支援の体制が確立され、それぞれが工夫をこらしながら質の高い臨床倫理支援を実施されていて、本当に勉強になります。今や病院における臨床倫理支援は、存在するのが当然の医療・ケアの基盤であり、その存在の有無ではなく、質を問われる時代になったといえるでしょう。また、新たな医療技術の実装に伴い、臨床倫理支援の射程も広がっており、気が抜けません。
当然のことながら、医療・ケアをめぐる倫理的問題が生じるのは、病院の中だけでありません。わが国は今後高齢化率が急速に高くなり、独居のひと、認知症をもつひと、そして年間死亡者数が急増すると見込まれています。病院外の在宅や介護施設などにおける医療・ケア提供者とその利用者のための臨床倫理支援について、これからますます重要性が増し、その基盤を早急に形成することが私たちに求められています。
第11回年次大会が、参加したみなさんが多様な場面における臨床倫理を共有し、それを各々のフィールドに持ち帰り、これからの臨床倫理の基盤を確固たるものとするための半学半教の場になることを願っています。
新型コロナウイルス感染症は、2023年5月8日、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」になりましたが、医療・ケアの現場ではまだまだ厳重な対応が続いています。学会会期中の蔓延状況がどうなっているのか見通せませんが、現地開催とオンデマンド配信を行うハイブリッド開催とする予定です。また、状況が許せば、2019年の第7回年次大会以来となる懇親会を開催したいと考えています。多くのみなさんとこれからの臨床倫理について熱く語り合えることを心から楽しみにしています。